性と恋愛 2025【性・セックスの意識】

  • セックスのイメージは、男性では「気持ちいい」が第1位となり、女性ではスキンシップや子づくりが上位にランクイン。
  • 恋人やパートナーとセックスに関する希望について話したことがあると回答したのは、両世代で3割程度にとどまった。
  • 性的同意を「絶対に大事だと思う」と回答したのは9割程度だった一方、「性的同意とはどういうものか、正直わからない 」と若者の4割、大人の3割が回答した。
  • 気が乗らないのにセックスに応じた経験は、若者世代で4割、大人世代で5割。既婚の女性では両世代で6割を超えた。

①恋人・パートナーと、これ話したことある?

②セックスってどんなイメージ?

③性的同意について

④気が乗らないのにセックスに応じたことある?

⑤セックスを強要されたことある?

※①~⑤の若者世代の集計結果は、実際の有効回答者4958名に対して、各層での性別×年代の構成が同じになるようにウェイト調整を行い、5745名分として算出した比率です。

谷口真由美さん(ジョイセフ理事)のコメント

 2019年から2年ごとの調査をしている「性と恋愛」の意識調査は、このたび第4回目となりました。特徴としては、継続的な設問においては、これまでの調査と大きく変化したものはあまりないといえます。一方で、新しく調査の設問に加わったものをみてみると、地続きの問題があることが見えてきます。

パートナーとの出会いは、若者、大人ともに第一位は「職場、バイト先、学校」とリアルな社会での出会いですが、その後、若者は「マッチングアプリ」や「SNS」が上位に入ってきますが、大人は「人からの紹介」と世代間の違いがみられます。結婚は新たに今回、子どもを持ちたいかという希望についてもあわせた設問としましたが、若者世代の7割は結婚願望があり、子どもを持ちたいという回答も6割を超えました。また、結婚したいがしていない理由、子どもを持ちたくない理由は、ともに「経済的不安」が第一位となり、大人世代でもそれぞれ、上位に入っています。ずっと言われてきていることですが、結婚や子どもを持つことを希望する人がそれを選択できる、社会環境の整備の必要性が、改めて浮き彫りになりました。政府が行っている少子化対策とのズレが浮き彫りになったともいえます。 恋人・パートナーに気に入られるために合わせてしまう割合は、若者は7割を超え、大人世代でも6割を超えています。これは、性別や世代を問わず、親密な関係であれば自分をありのままに理解してもらいたいと考えていたとしても、実体としては、本当の自分を出すことができず、相手に気に入られようと行動しているということを示唆しています。このことは、自分の生き方に関すること、自分の人生の自己決定権を、相手に委ねてしまうという傾向でもあるといえます。つまり、性に関することはもちろんですが、選択的夫婦別姓などにも影響が出ていると考えられます。以下、今回の結果とともに、これらの傾向についてみていきましょう。

セックスに関する希望を恋人・パートナーとセックスに関する希望について話したことがあると回答したのは若者、大人とも3割程度にとどまりました。そのなかでも、男性より女性のほうが、性に関することを伝えにくいという規範も、まだまだ存在していることがわかりました。

それは、例えば、気が乗らないのにセックスに応じた経験、つまり性的同意ができないままに、NOと言えなかった経験ともいえますが、この設問などから読み取れます。この経験は、若者全体で35.1%、大人全体で52.4%にのぼりました。さらに細かく、男女、結婚の有無で内訳をみると属性別に高い順に、①既婚大人女性(65.4%)、②既婚若者女性(67.2%)、③未婚大人女性(61.5%)、④未婚若者女性(44.2%)、⑤既婚若者男性(42.7%)、⑥既婚大人男性(40.6%)、⑦未婚大人男性(36.7%)、⑧未婚若者男性(23.7%)となりました。いずれも、女性のほうが高い傾向がみられ、さらに年代と結婚の有無でも差が出ています。

また、異性間のセックスで避妊は誰がするものかということについては、主に「男性がするもの」と答えた割合は高い順に、①大人男性(72.6%)、②大人女性(65.5%)、③若者男性(59.9%)、④若者女性(49.9%)となっており、大人で男性に委ねる傾向が高いことがわかります。低用量ピルや緊急避妊薬を使用した経験のある割合は、若者の方が高い傾向にあります。

セックスに対するイメージも、性別による差が大きく、男性では両世代で「気持ちいい」が第一位(若者男性46.2%、大人男性51.3%)となった一方、女性ではスキンシップ(若者女性39.4%、大人女性45.2%)や子づくり(若者女性24.6%、大人女性29.2%)が上位にランクインしました。

一方で、性的同意については「絶対に大事だと思う」と回答したのは9割程度(若者86.4%、大人86.9%)であった一方、「性的同意とはどういうものか、正直わからない 」と若者の42.4%、大人の31.0%が回答しました。重要性はわかっていながらも、具体的な行動につながっていないという結果は、前回調査(2023)と同様の傾向です。性的同意という言葉だけではなく、知識、そしてどうすれば性的同意ができるのかというスキルも身につけられていないと、使うことはできないということです。

学校で受けた性教育は「役立っている」と回答したのは若者の53.3%、大人の27.6%でした。特に不足していた/もっと学びたかったと感じた内容としては「セックス(性交渉)」で、若者32.0%、大人23.5%、「避妊」が若者25.5%、大人27.4%が上位となりました。その一方で、性に関する情報源は、「インターネット・Webサイト」が若者34.9%、大人39.3%と第一位で、若者は「動画サイト・SNS」が第二位(30.0%)。男性においては「アダルトビデオ・サイト」が若者男性で27.8%、大人男性で30.2%と上位に入りました。男性にセックスを委ねる傾向にあるなかで、とりわけ男性がアダルトビデオで描かれている内容を無防備に信じてしまうことの危険性は、どれだけ指摘しても足りません。アダルトビデオは、描かれている女性像も場面設定もファンタジー(架空のもの)であり、著しく現実をゆがめているものも多く存在しています。これらをAV神話とよびますが、AVは性的な知識の情報提供のために作成されたものではないのです。性に関する情報は、科学的に正しい情報を得ることがもっとも大切なことであり、それらに誰もがアクセスできる環境整備が急がれます。

 さて、ここまでと性質が少し違うように感じられるかもしれませんが、自身の姓について、「名字を変えるつもりはない」と回答した若者男性は41.8%でした。若者女性では9.6%だった一方、「名字を変えるつもりだ」「状況によっては変えてもよい」で49.6%を占める結果となり、結婚するカップルのうち約95%*で女性が改姓する、性役割が残る現状を反映する結果となり、人生を相手に委ねてしまう傾向があるのは、男性より女性に多く見られる傾向とも合致します。*厚生労働省「人口動態統計」(2023年)より

 これらの結果からうかがえるのは、セクシュアル・リプロダクティブヘルス・ライツ(SRHR)が認識もされず、大切なものと捉えられていないことだということです。事実、SRHRという言葉は、若者で10.3%、大人で5.3%しか知られていません。自分の人生を誰かに委ねないためにも、SRHRをきちんと理解し、使えるようにしていくことが大切だと考えます。

谷口真由美

ジョイセフ理事。立教大諮問委員、神戸学院大学客員教授、一般社団法人「ビジネスと人権研究所」代表理事、一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」代表理事。大阪国際大学准教授などを経て2019年に公益財団法人「日本ラグビーフットボール協会」理事に就任。2021年までラグビー新リーグ法人準備室長、新リーグ審査委員長を務めた。専門分野は人権、ハラスメント、男女共同参画、DE&I、ESG、SDGs、ジェンダー法、国際人権法など。主な著書に「日本国憲法 大阪おばちゃん語訳」など。

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