2017年、The Weeknd & Daft Punkがリリースした「I Feel It Coming」のミュージックビデオに出演。YouTubeでは2億回以上の再生数を誇る。女優活動としてはさまざまな映画やテレビ番組に出演。『ノルウェイの森』(2010年)がヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞にノミネート、実写化が話題となった『進撃の巨人』(2015年)にも出演。モデルとしてはニューヨーク、ミラノ、パリのファッションウィークに参加。またデザイナーとして<Kiko Mizuhara for OPENING CEREMONY>を発表し、自身のプロジェクトOKでは<MINE DENIM>や<ESPERANZA>とのコラボレーションラインも発表。アジア人初の<Dior Beauty>アンバサダーに抜擢、<COACH>のアンバサダーとしても広告に出演している。
OK(Office Kiko) ウェブサイト:https://officekiko.com/
I LADY.が掲げる「Love, Act, Decide Yourself.」。I LADY. HOURSは自分らしく生きる人からライフスキルのヒントを知るコラムコンテンツです。4人目のゲストは水原希子さん。インタビューの前編では、グローバルに活躍する経験から培ってきた「本当の美しさ」について語っていただきました。後編のテーマは、ずばり「生き方」。希子さんは自身のSNSやメディアを通じて、人権、環境、動物愛護、女性の健康など、今起きている社会問題についての自らの考えを発信しています。その信念の中に、水原希子流のライフスキルがつまっていました。
インタビューの前編では、美をテーマにお話を伺いました。後編は希子さんの人生観について聞かせてください。まずは恋愛観についてです。希子さんは恋愛、結婚についてどう考えていますか?
私は恋愛に固執するほど不幸になると思います。恋愛は良いことだけど、人生はそれだけではないですよね。人として考えなければいけないのは、一度きりの人生だから自分がしたいようにするということ。その中で、結婚したいと思える人と出会えるのがベストだと思います。その一方で、人は変化していくことが自然な生き物だから、離婚するのも仕方ないというか。私の場合、自分の両親が離婚しているからそう思う部分もあります。
結婚する、離婚することにポジティブ、ネガティブなイメージがない?
そうですね。芸能人が結婚するとイメージが良くなって、王子様やお姫様のように尊い存在に仕立てられているように感じますが、でも離婚したら、めちゃくちゃに叩かれて、仕事ができないくらいに打ちのめされる。それは本当に変だと思います。もちろん離婚の理由はそれぞれ違うので、時と場合にもよると思いますが、本人たちが良ければそれでいいのに、関係のない人たちに人生をボロボロにされてしまうのは違いますよね。
たしかに、芸能人にはイメージが必ずつきまといます。
私にとって結婚も離婚も人生に起こりうるシーンでしかないから、結婚によって自分のイメージを変えたい、ママタレントの仕事を獲得したいという気持ちもないです。それをし始めたら自分じゃなくなると思うから。愛にも家族にもいろいろな形があると思うんです。お父さん、お母さんがいて、という典型的な家族の形以外もあるはずだから。
もちろん感情のしがらみもあるだろうけど、人としてどうやって付き合っていけるか、どんなところを尊敬できるかという部分で、よりお互いを受け入れる、寛容になれる関係性が私らしいと思います。
希子さんは婦人科検診の大切さを呼びかけています。女性の健康と向き合うようになったきっかけを教えていただけますか?
私は子宮頸がんについて認識していなくて、若い人がかかるケースはものすごく少ないだろうなと思い込んでいたんです。でも実はまったく違って、特に若い人がかかりやすくて、しかも、その原因の多くが性交渉によるものだということを知って衝撃を受けました。検診もマメに行っていなかったので、これはダメだと思ってワクチンを打つことを決めました。
日本では、子宮頸がんは年間約10,000人が診断されて、約3,000人が命を落としているそうですね。
しかも新たに診断される世代は、20代が一番多いんですよね(*)。私は勇気を出して、自分がワクチンを打ったことを発表したけど戸惑いもありました。なぜかというと、後遺症を懸念するワクチン反対派の人たちが一定数いるので。でも打つからには、自分なりに徹底的にリサーチしました。そのなかで先進国では例えば、オーストラリアでは性交渉の経験がまだない頃に打つのがもっとも効果的とされています。私は海外でワクチンが推進されていることを知って打ったけど、これを機に避妊や検診を積極的に呼びかけるようになりました。
*子宮頸がんの罹患数は、20代後半から増え40代がピークとなっている
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンに関しては賛否がありますね。
もちろん、ワクチン接種には賛否がありますが、検診を一年に一度受けていれば子宮頸がんの予防につながりますよね。私には教えてくれる人が周りにいなかったし、正直なところ怖い思いをしたこともあります。学校でもコンドームを配ってほしいくらいだなと思うし、ちゃんとした性教育をしてほしいです。結局、被害を受けるのは女性側であることが圧倒的に多いと思います。子宮頸がんは子宮の摘出だけでなく死に至るケースもあるので。
女性の健康について発信するようになって、どんな反応が届くようになりましたか?
「すごく大切なことなのでうれしい」という声が多いですね。結婚して、いざ子どもを産むとなったときに子宮頸がんのラストステージに差し掛かっていて出産できなかった、という人が結構いたんです。現実に起きていることなんだなと痛感して、専門家ではない私なりに向き合っていこうという気持ちにさせられました。
ちなみに、日本は小学校6年生から高校1年生までは無料で子宮頸がんの予防効果のあるヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンを打てることはご存知ですか。
知っていたけど、そんなに長い期間なんですか!
学校でHPVワクチンの接種を推奨していた時期もありました。でも、その事実が知られていないこと、現在、学校で教育を受けられていないことが問題だと思うんです。
私もそう思います。ワクチンを打つかどうかは本人が決めればいいことだから、無料で受けられる期間を知ってほしいし、期間そのものをもっと広げてほしいです。
希子さんは環境問題に対する意識も高く、若い世代が興味を持つきっかけのひとつになっていると思います。ご自身のSNSのプロフィールには「地球人」と書いていますが、希子さんが目指す未来について教えてください。
せっかく生まれてきたのだから、人類を前進させることや地球に良いことはしていきたいです。環境問題については知ったからには見て見ぬフリはできませんよね。私は子どもの頃、母にゴミ拾いに連れて行かれたり、ご飯を残す度に怒られたりしたけど、「みんな別に気にしていないからいいじゃん」と、何も考えずに生きてきました。でも、自分の世界が広がっていくにつれて、周りの人たちが環境問題についての情報を発信していて、気になって調べ始めるようになったんですね。
あとはNetflixやHuluのような動画配信サービスが出てきたことで、いろいろなドキュメンタリーを観るきっかけが増えて、地球に深刻な問題があることを知るようになったことも大きいです。特に地球温暖化については夏の異常な暑さや災害の多さを自分の肌で感じてしまったから。
フォロワーが多いからこそ、「発信しなきゃ」という使命感が大きい、ということもありますか?
それはありますね。でも正直に言うと、今のようにフォロワーを獲得できたり、いろいろな人たちが知っている存在になれると思っていなかったです。本当にラッキーなことにいろいろな方たちに導かれて、可能性を伸ばしていただいたからこそ、今の私はあると思っています。せっかく今のポジションを獲得できたのだから、私にできることを通して世界をより良くしていきたい。自分が生きている場所を大切にするのは、当たり前に考えなくてはいけないことだと思うからです。
たくさんの情報があふれている中で、伝えるべきことを選ぶのは難しいのでは?
難しいですね。でも、地球がめちゃくちゃになってしまったら、自分や大切な人も巻き込まれてしまうかもしれない。それに対して自分ができることをやろうと必死についていっています。
ずばり、希子さんが自身の活動を通じてメッセージを伝えたいという原動力は何ですか?
誰かにとって、私が何かをポジティブに変えられるきっかけになれるのであれば、一番良かったなと思えるんですね。「これまで苦しかったけど、希子ちゃんのおかげでポジティブになれた」「しがらみから解放されて、ありのままの自分でいいんだと思えたことがうれしい」とか、そういった言葉が私にとって最高にうれしいことです。正直、「かわいいね」「キレイだね」と言われることの何倍もうれしいです。
そう思うのは、やはりいろいろな方たちに導かれてきた経験が大きいのでしょうね。
そうですね。たくさんの言葉に勇気付けられてきたから、同じように誰かに返していきたいですし、私が正しいと思うことを選んで、多くの人を幸せにできたら。コロナでの自粛生活を通じて、もっとそう思うようになりました。
大きな問題に向き合うと同時に、人間一人ひとりの心を動かそうとするのは、誰もができることではないと思います。
SNSで言葉を発信するのは得意ではなくて悩むことも多いけど、それによって自分自身も成長していけると思っています。理想的な世界や地球が健康的な状態にあることを目指して、自分のペースでピースフルな活動を続けていきたいですね。
取材:I LADY.編集部
文・編集:加藤将太