語る I LADY. 「あなたは一人じゃない」ユースが集えば世の中を変えていける

「あなたは一人じゃない」ユースが集えば世の中を変えていける

「#男女共同参画ってなんですか」プロジェクト / I LADY.アクティビスト、ピア・アクティビスト

櫻井彩乃さん、小田原未依さん、福田菜月さん

「#男女共同参画ってなんですか」プロジェクト
ウェブサイト:https://u30equal.com/

ジョイセフとI LADY.アクティビスト、ピア・アクティビストたちが中心となって展開した「#男女共同参画ってなんですか」プロジェクト。
当プロジェクトは、日本政府がパブリックコメントを募集(8月1日から9月7日)していた「第5次男⼥共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え⽅(素案)に、「男女共同参画社会の実現」を目指してユースの意見を取り入れることを提言するために発足したもの。
2020年9月4日、SNSで募ってまとめたユースからの提言書を橋本聖子男女共同参画担当大臣に提出し、さらに大臣との面会で直接意見を交換するという、プロジェクト開始当時は想像していなかった素晴らしい成果を果たしました。
そんな経験を通じ、コアメンバーである3人は今どんなことを考えているのか。さっそくZOOMでインタビューしました。

01

不満や愚痴で終わらせずいかに「伝えるか」が大切!

まずはお一人ずつ、自己紹介を兼ねて「#男女共同参画ってなんですか」プロジェクトに参加した経緯をお話しいただけますか?

櫻井:私は高校時代に同級生の男子から『お前は女なんだから可愛くしてればいい、黙っていろ』という言葉を投げられたことをきっかけにジェンダー問題に関心を持つようになりました。当初は途上国を中心とした世界に目を向けたんです。しかし活動する中で、実は世界よりも日本のほうがジェンダー問題に遅れをとっているのではないかと気づき、団体を立ち上げて国内のジェンダー問題、特に若い女性の問題に取り組んできました。そして働いていた会社を辞め、独立したタイミングでジョイセフにお声がけいただき、このプロジェクトを行うことになったんです。

小田原:現在私は大学の理工学部におり、ジェンダーとは関わりのない学問をしているのですが、それとは別にライフワークとして防災問題に取り組んできました。その中で、災害時に起きる女性に対する性暴力などのジェンダー問題にも注力するようになっていったんです。防災をやるならジェンダーにも取り組まなければ。そんな折ジョイセフの活動に惹かれ、I LADY.ピア・アクティビストとしても活動するようになりました。そのタイミングで今回のプロジェクトを知り、これだ!ってビビビッときて(笑)。私の専門は防災ですが、その角度からこのプロジェクトに何かお役に立てることがあるんじゃないか、また自分の知らないジャンルのことも学ぶ機会になるのではないかと思ったんです。

福田:実は私の誕生日は10月11日、国際ガールズ・デーに生まれたんです。これは何かの運命かもしれない、そんなふうにどこか感じていたのかもしれません。幼少期からガールスカウト活動を通じ、少女たちへの暴力をなくす運動『ストップザバイオレンス』活動に関わってきました。もともとあったジェンダー問題への興味がさらに強まったきっかけはマララでした。ちょうど自分の誕生日にその報道を耳にし、こんなことがあっていいのかと衝撃を受けたんです。以来、大学でもジェンダー研究や国際法について学ぶこととなり、その延長で国連の活動をし、そこで櫻井(彩乃さん)に出会いました。そこから交流が始まり今回のプロジェクトも櫻井さんを通じて声をかけていただきました。こんなプロジェクトが始動するけど興味ある?の問いに即答で『興味あります』と(笑)。

それぞれ活動のベースや専門ジャンルが違う中共鳴し、こうしてここに集まっているわけですね。

小田原:はい。実は私は実際におふたりにお会いしたのはこのプロジェクトの提言書提出の日。コロナの影響もありましたけど、それまではオンライン上でのつながりだけだったんです。そういうことができるのもこの時代の良さでもありますよね。

福田:今回のことでSNSの力というものをより強く感じました。ただこれにはメリットデメリット両面があるというのもわかったんです。今回のユースの提言を集める際にもそれは感じました。

櫻井:そうなんです。みんな何か団体に所属したりといった帰属がないほとんどが『個人』。ゆえに『孤独』を味わってしまうことも…。twitterなどでは今、ジェンダー問題を扱うことが難しい状況にあります。どうしても反発を恐れてしまうため、せっかく意見を持っていてもそれを発信する勇気がない、そんな声も多く耳にしました。いずれ私たちのこのプロジェクトがそれぞれジェンダー問題を真剣に考えているユースたちのプラットフォームになっていったらいいな、そんなふうに感じましたね。

↑ #男女共同参画ってなんですかInstagram(@u30genderequal)の画面。フォロー募集中です。

「#男女共同参画ってなんですか」プロジェクトではユースの意見を国政に届けようというプロジェクトかと思いますが、なぜ若い世代の声を届けることが大事だと考えているのでしょうか?

櫻井:これから先、5年10年の計画を作るのに、その時代を生きていく世代の声なしで作られてしまうことに大きな違和感がありました。もちろん大人たちや専門家の方々がユースのことも研究し分析はしているのでしょうが、それだけでなくやはり『生の声』というのは何よりも大事だと思ったんです。実際に計画を作っている方々にユースの声を届けると、橋本聖子大臣も『知らないことがたくさんあった』と非常に驚かれていた印象を受けました。

福田:ちょうど私たちユース世代はこれから結婚や出産など、ライフイベントが増えてくる大事な時期。やはり当事者じゃなきゃ実感できない不安や心配、希望がありますよね。それをただ愚痴るのではなく、きちんとした形で発信しなければいけないと思ったんです。

小田原:本当、そう思います。伝える義務があると私も感じました。それに時代の移り変わりがものすごく激しいことを実感しています。例えば私は就活をしているのですが、先輩に話を聞くと1年前ともう状況が大きく変わっているんです。そうだ、大人たちにこの移り変わりを知らせなくてはいけない。不満を言うのではなくいかに伝えるか。その伝え方も重要だと感じました。友達同士の愚痴で終わらせるのではなく、それをどう体系立てていけばいいのか。ユースの意見を形にして伝えることの大切さを今回のことで強く意識するようになりましたね。

02

一時的なムーブメントで終わらせず継続させていきたい!

実際にユースの声を集めてみた結果、どのような意見が多かったのでしょうか。また実際の声を聞いて感じたことを教えてください。

福田:選択的夫婦別姓制度や同性婚、事実婚など、結婚に関することに非常に関心が高いことがわかりました。世界ではこんな結婚が認められているのに日本ではなぜ?といった、結婚の選択肢を増やして欲しいという意見が非常に多かったですね。今、政治を動かしている人たちの結婚観とユースの結婚観、この開きは非常に大きいものがあると感じました。そもそもそんな価値観を持っていることすら知らないかもしれない。だからきちんと伝えなければ変わるわけがないなと痛感しましたね。

小田原:性教育に関心を持っている人も多かったですね。また私にとって印象的だったのは、ユースは非常に性別への考え方が柔軟だなということです。男女という言葉そのものへの違和感を持っている人が非常に多かった。例えば暴力問題を扱う際には『男性から女性への暴力』が前提になっていることへの違和感があったり…。

櫻井:そうなんです!実は今回のプロジェクト名の『#男女共同参画ってなんですか』ですが、そもそもこの『男女』ってなんですか?っていう皮肉でもあるんですよ(笑)。国が作る計画が男女の二元論で成り立っていること自体に違和感を持つべきだと思うんですよね。ここに『男女』とあることで、LGBTQの方は自分たちの意見は受け入れられないんじゃないかといった不安を持つかもしれません。またこういった計画は女性のために作られているのではないかと、男性は疎外された感覚も持っています。現在女性が生きにくい社会であることは確かですが、それだけじゃありません。LGBTQの方や男性もこの計画に含まれている、そのことをしっかりとユースは認識し、声を上げている人が多かったですね。

「#男女共同参画ってなんですか」を今後、どのようなプロジェクトにしていきたいという夢はありますか? またI LADY.と組んでやりたいことがあったらお聞かせください。

小田原:今回のことで横のつながりを持つことの重要性を知りました。男女共同参画には性犯罪や性教育、夫婦問題、私が専門としている防災問題など、あらゆる要素が全て関連していることがわかったんです。またそれにより、専門分野以外の人たちと意見交換をしたり協力し合うことの大きな意味を知りました。なかなかそれぞれのジャンルの人たちが手と手を取り合うことがなかったので、今回のプロジェクトがその横のつながりを持つためのプラットフォームになれたらいいなと感じました。

福田:今回はコロナのこともあって、主にSNSでの行動が主体でした。しかしそれによりSNSの強みを知り、また同時に弱みもわかりました。ただこの強みをさらに生かしていくことも、今後のプロジェクトを進めるにおいてとても重要なことだと思います。I LADY.とタッグを組むことで、今まで孤独を味わってきたユースの活動家たちをひとつにする吸引力になるかなと期待しています。私自身、活動のベースがない無所属の人間だったので、I LADY.のおかげで横のつながりも増え、何よりも一人じゃないんだと本当に勇気付けられましたね。

櫻井:今回は橋本聖子大臣に直接提言できはしましたが、あくまでも通過点です。私たちの目的はそこではなく、実際の計画にユースの団体も参加することにあります。大きなゴールですが、諦めずやっていきたいですね。また今回の活動を一時的なムーブメントで終わらせてはいけないというのも思っています。日本は着火も早いですがブームが終わるのも早いんです。あれだけ注目されたme tooキャンペーンも、あっという間に下火になってしまいましたし…。今回のプロジェクトを今後どう育てて継続させていくか。ジョイセフのI LADY.と協力し、単なるムーブメントでは終わらないしっかりとした土台を作っていこうと今日改めて3人で誓いました。今回の活動を通じ、一人でも多くのユースに共鳴していただけたらいいなと思っています。そして伝えたいのは『あなたは一人じゃないです』ということ!

福田:本当そうです。一人じゃないです。興味はあるけど、でもどうしたらいいかわからない、そんな声も大歓迎です!

小田原:私たちもまだまだ勉強中です。協力しあって、大きく継続的なムーブメントを作っていけたらうれしいですね。

取材:I LADY.編集部
文・編集:吉田奈美

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