語る I LADY. 人生は「Decide Yourself」の連続。医者はその選択肢を広げることが仕事

人生は「Decide Yourself」の連続。医者はその選択肢を広げることが仕事

産婦人科医 / 医学博士 / イーク表参道 副院長

高尾美穂さん

東京慈恵会医科大学大学院修了後、同大病院産婦人科助教、東京労災病院女性総合外来などを経て現職。大学病院では婦人科がん(特に卵巣がん)専門。2003年にヨガと出会い、ケンハラクマ師に師事。ヨガ、アンチエイジング医学、漢方、栄養学、スポーツ医学を多角的に用い、様々な角度から女性の心身をサポートしている。
http://www.mihotakao.jp

産婦人科医としてキャリアを積み重ねる一方、ヨギーニとしても精力的に活動している高尾美穂先生。西洋医学からのアプローチはもちろんのこと、東洋医学やスポーツ医学、栄養学など、様々な観点から女性がよりよく歳を重ねていくためのサポートをしています。「今の自分は過去の自分が作ったもの。だからこそ今何をするかが重要」とは高尾先生の言葉。ご自身が考える「女性の生き方」、そこにはI LADY.が大切にする「Decide Yourself」との大きな共通項がありました。

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産婦人科医として、女性の幸せのために選択肢を提示する

高尾先生はヨギーニ(ヨガをする女性)としても精力的に活動していますが、ご自身を自己紹介する際には職業を何と答えているのですか?

迷いなく「産婦人科医」です(笑)。ヨガやスポーツドクターなど様々な活動もしていますが、医者という職業は何があっても第一です。というのも、医者になるには莫大な税金を使ってもらっています。最低でも国家資格分の恩返しをすることは当たり前。そのために患者さんと向き合うだけでなく、毎年自分で決めた学会には必ず参加し研究を発表したり最新の報告を学んだりしています。

高尾先生は医者になって、数ある選択肢の中からなぜ産婦人科医を選んだのですか。

人口の半分だけ診ればよいから、というのは冗談ですが(笑)、すべての人間を自分一人で診ることは不可能かもしれない。でも、女性のことだけは全力で幸せにしようと決意したんです。それに、日本は先進国であるにもかかわらず、性教育や中絶数、産後のサポートなど、世界的に見て遅れている現状があります。この20年間、女性の健康や生き方についてはとことん向き合ってきました。

産婦人科医として最も大切なこととは何だと思いますか?

「選択肢」を見せることです。朝何時に起きよう、何を着よう、何を食べよう、誰と会おう……と、人は1日に最低でも7,000回の選択をしていると言われています。特に産婦人科に関わる選択は、日常の選択以上に責任が伴いますし、そもそも選択肢を複数持っていないことも多いために決断が難しいのが現状です。

そこで産婦人科医ができることが、選択肢を見せることだと。

医者が結論を出すのではなく、患者さん自身で決断できるように選択肢をわかりやすく提示するんですね。たとえ望まない妊娠だとしても、その人の選択の結果ですし、その後どのような人生を歩むかも、その人の選択があってこそ。そのときに医者ができることは、選択肢を数多く示し、その女性の今とこれからにとって幸せな選択ができるように可能性を広げることなのだと思います。

「選択」することの大切さを医者として説いてきましたので、I LADY.の掲げる理念の一つ、「Decide Yourself」(=自分らしい人生を、自分で決められること)には大変共感しています。

02

人生は「Decide Yourself」の連続だ

日本の女性は欧米各国と比べ、婦人科に慣れていないと言われていますが、高尾先生はどう捉えていますか?

二極化していると思います。妊娠したことで、人生で初めて婦人科にかかることもあるくらいにハードルが高いと感じている人がいる一方、過剰に気にして週に何度も検査を求める人もいます。1年に1度、子宮頸がんとエコー検査をしっかりと受けておけば、そんなに問題は起こらないはずなんです。

婦人科にかかる場合、どんなことを意識しておけばよいですか。

病院に行く前に、病状や聞きたいことをあらかじめメモしておくことをすすめていますね。内診台に乗る前にできるだけ詳細に症状を伝えてください。緊張してしまうときっと忘れてしまうから。「生理が変だった」という場合、患者さんは「一体どうしたら治るのか」とこれからのことを知りたがりますが、医者はまず「今回の生理が普段と違うのはなぜか?」を探そうとします。

ちゃんと睡眠はとっていたか、ご飯は食べていたか、運動していたのか、ストレスを感じるようなことはなかったのか……など、2種類のホルモンの大きな変化の最後に起こるのが生理なので、その生理の前の状況を自身で見直すことはとても大切です。

高尾先生は「予防医学」にとても力を入れていますが、すぐに始められる予防医学にはどのようなものがあるのでしょうか?

最大の予防は「運動」です。1日7000歩は歩く、エスカレーターではなく階段を上るようにするとか、簡単なことで構いません。でも、ただなんとなく日常を過ごしているだけで運動できている方は少ない。ここでも意識的に「運動する」という決意をしなければならないんです。たとえばヨガは体を動かすことに加え、呼吸を通じて心にもアプローチできることから、ストレスマネジメントにもなります。

運動以外にも、食事や睡眠ももちろん重要。特に睡眠不足は深刻な状況です。実は日本は、OECD加盟国の中で最も寝ていない国だということを知っていますか?

いえ、まったく知りませんでした。

私たちの年代では、1日に7時間から9時間の睡眠が必要です。10代なら、さらに多くの時間をとるべき(*National Sleep Foundation より)。そのためには、1日を終えて余った時間に寝るという考え方ではなく、積極的に「寝る時間を確保する」という決断をする必要があり、休むことから1日が始まるという発想になることが望ましい。寝ることでストレスが軽減され、幸福の感じ方も変わってきますので、悩みを抱えて悶々とする暇があったら「まずは寝て」と言いたいですね(笑)。

日々調子よく過ごせるための予防を心がけて運動習慣や睡眠などを見直し意識高く生きることで、将来的な医療費の削減や、本当に医療を必要としている人を支えることにもつながります。

高尾先生は毎日どのくらい運動していますか?

週4日はジムに行き約5kmを走り筋トレをして、そして毎朝ヨガをしています。決断せずとも歯磨きをするかのように、今では習慣になっていますね。毎日同じことを繰り返すことってとても重要なんですよ。「なんで今日は足が重たいんだろう?」などと「昨日とは違う自分」にすぐに気づけるようになり、それが予防や対策につながります。女性は男性よりも長生きですし、病気になりにくい環境を元々持っているんですね。

それはなぜですか。

女性は生理、正確に言うとエストロゲン(卵胞ホルモン)に守られているから。なぜ女性は生理によって健康でいられるのか。その意味をよく考えて生きるべきですね。それがわかっていれば、エストロゲンの分泌を止めてしまうような極端なダイエットをしないという決断にもつながります。

人生は「Decide Yourself」(=自分らしい人生を、自分で決められること)の連続です。そして決断の基になるのは、自身の持っている過去の経験と正しい知識。今の自分が選ぶことが、この先の自分をつくります。I LADY.と私をつなげているこの「Decide Yourself」は人生の大きな指針となります。みなさんにもぜひ向き合っていただきたいですね。

取材・文:吉田奈美
編集:加藤将太

*この記事は2018年9月4日に取材したものです

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