語る I LADY. いつか子どもがほしい人に、知っておいてほしいこと

いつか子どもがほしい人に、知っておいてほしいこと

プロゴルファー

東尾理子さん

帝京高校2年のときに「日本女子アママッチプレー」で優勝。1995年に米・フロリダ大学に留学。1999年8月に日本のプロテストに合格し、プロゴルファーとしての活動をスタート。父はプロ野球元西武監督の東尾修。2009年12月に俳優の石田純一と入籍。2012年11月に第1子、2016年3月に第2子、2018年4月には第3子を出産した。
https://ameblo.jp/riko-higashio

2009年に俳優の石田純一さんと結婚し、3人の子どもたちと暮らす東尾理子さん。第一子を妊娠するまで不妊に悩み、著書『「不妊」じゃなくて、TGP 私の妊活日記』に綴った当時の様子は、同じ悩みを抱える女性たちの共感を呼びました。不妊治療と向き合った経験のある理子さんが、若い世代に伝えたいこと。自身の妊活だけでなく、ゴルフで教わったことや幼いときの話も交えて語っていただきました。

01

不妊はネガティブじゃない。妊娠するためにトライするということ

理子さんには3人のお子さんがいますが、ご自身が不妊だったときのことを聞かせてください。

30代半ばに差しかかった頃に結婚して、いざ自分が妊娠したいと思ってなかなかできなかったときに、初めて不妊に直面しました。そこで初めていろいろと勉強し、体の仕組みについて理解することができました。

大学時代から20代にかけては、ゴルフの海外の試合に出場するためにアメリカに住んでいたんです。日常的に体のメンテナンスを行っていたし、大学の中に婦人科もあって、学生に対するケアはとても充実してました。女性が体調のメンテナンスのためにピルを飲むのも普通のことで、当時から「モーニングアフターピル」の知識もありました。婦人科は身近だったし、ある程度の知識は持っているつもりでしたけど、当時は自分の妊娠についてはまったく考えもしなかったですね。

不妊をきっかけに、どんなことを学んだのですか。

女性にとっては20代半ばから後半が妊娠の適齢期とか、そういう基礎知識を含めてですね。まず、月経がきているからといって妊娠できるとは限りません。女性が持つ卵子のもと(原始卵胞)は胎児のときに一番多くて、毎月の月経周期ごとに約1000個ずつ減り、いずれはなくなってしまうもの。つまり誰にでもタイムリミットがあるんです。

年齢に限らず、もともと体質的に原始卵胞が少ない人もいます。また不妊の場合、女性が原因とは限りません。今や男性の100人に1人が男性不妊と言われています。精液が出ていても、その中に精子がいないこともあります。だから、子どもがほしいと思うカップルは、自分の体だけでなくパートナーの体についても知識をつけておく必要があります。子どもを持つことは二人の共同作業だからです。

不妊と向き合ったときの日記を著書『「不妊」じゃなくて、TGP 私の妊活日記』(主婦の友社)に書かれていますよね。

「TGP」とは「Trying to Get Pregnant」(妊娠するための活動)という自分で考えた言葉の略なんですね。その言葉の通り、妊娠するまでに自分がトライしてきたさまざまなことを記録しています。不妊という言葉の響きが、なんだかあまり明るいものに思えなくて、ポジティブな捉え方をしたいと思い、「妊娠するために、今、私ができることは何だろう?」と考えてみたんです。何が正解かはわかりません。「まだやっていないことを、やってみよう」というシンプルなトライです。

不妊をオープンにしたことで、どんな影響がありましたか。

わかったのは、同じように悩んでいる人がどれほど多いか、ということですね。当時は不妊について世間にオープンにする風潮はなくて。不妊治療に通っているということを、周囲に話している人はほとんどいなかったように思いますが、多くの方が周りに言えずに実は悩んでいらっしゃいました。私自身も「自分だけじゃないんだ」と救われた気がして、とても心強く思いました。

02

自分とパートナーの体のことを知ろう

「TGP」の結果、子どもを授かった理子さんとして、妊娠について思うことはありますか?

私はありがたいことに子どもを授かることができましたが、子どもを持つという意味では、出産することだけではないと思います。例えば、特別養子縁組。実は養子を受け入れるにもある程度の年齢制限があると聞きました。もちろん条件は年齢だけでは決まりませんが、高齢の場合はさまざまな事情で養子を受け入れることができないケースもあります。「子どもがほしい」と思ったら、まずどんな可能性があるのか考えてみるのもよいのかなと思います。

「妊娠・出産を経験したいのか?」「二人の遺伝子を残して家族をつくりたいのか?」「一体自分は何をしたいのか?」を深掘りしてみると、自分の気持ちが見えてきます。養護施設にいる子どもたちの多さを見ると、子どもを持つということについて考えさせられます。年に1回も会いに行かないのに、親権を手放さない人もいると聞きました。

将来、子どもを持つことについて、若い人たちはどう知識を身につけていけばいいでしょうか。

今の日本の性教育は子どもができることを前提とした性教育に特化していますが、どうしたら子どもをつくれるのかという「生殖教育」が足りないと感じています。子どもをつくるには、男女ともに自分の体を知り、自分とは違う性についても知ることが不可欠です。これまでの自分の経験も活かして、男性にも女性にも啓発活動をしていきたいですね。

私はもっと若いうちに産んでいたら、もっと仕事ができたのかな……と思うこともあって。だからこそ、自分の気持ちに素直になって、ベストを尽くしていきたいと思います。後悔しないために一番大事なのは、「自分を認めてあげること」。一つの基準として、「10年後の自分が振り返ったらどう思うか?」を常に考えています。

どうやって、そのような強い精神力を身につけたのですか?

小さい頃からゴルフで鍛えられた経験は大きいかな。10代は嫌味も言われたし、散々厳しい言葉をぶつけられてきたと思います。だんだんと、あまり意識しないようになりましたが(笑)。自分で自分の道を切り開くしかなかったから、人と自分を比べなくなりました。人と違って当たり前だと受け入れるしかないんです。失敗するのも当たり前であって、それは子育てにも言えると思います。自分がどうしたら心地いいか。どんな自分でいたら納得できるか。その答えは自分で探すしかないですよね。

03

一番の決断は、みんなが反対する人と結婚したこと

ご自身のこれまでの決断の中で、一番記憶に残っているものは何ですか?

周り全員が反対する人と結婚したことです(笑)。夫(俳優の石田純一さん)とは年の差があったため、仲のいい友人たちは「浮気したらどうするの?」とか「旦那の介護と育児が一度に来るよ」と心配してくれました。「たしかに……」とも思いましたけど、それでも自分の決断を信じてよかったなって。

自分をしっかりと持つことの大切さはどうやって身につけたのですか?

小さい頃に読んだ『あおくんときいろちゃん』(レオ・レオーニ著、至光社)という絵本ですね。仲良しの青い「あおくん」と黄色の「きいろちゃん」が、一緒に遊びすぎて緑色になってしまったために、両親にも自分だと気づいてもらえなくなってしまうんですね。二人が悲しくて泣いていたら、元通りの青と黄色に戻って、おうちに帰れるという物語です。この本を読んで、「自分の色をきちんと持っていないと、何者でもなくなってしまう」と思いました。

自分の色を持つきっかけとなったのは、やはりゴルフですか?

そうですね。私はゴルフが好きだったから、プロゴルファーになる道を選びました。何事も自分の意志で選ばなければ続かない気がします。ゴルフはメンタルのスポーツと言われています。そして個人競技なので、自身の判断力がとても大事です。キャディの意見を聞くかどうかは自己判断ですし、何より自分の意志が固まっていないと、必ずミスショットになるんです。心を決めて、自分を信じて、ショットを打たなければならない。そのために日頃からスポーツ心理学者とメンタルトレーニングや習慣付けをするんです。

石田純一さんには結婚する前に子どもや将来のことについて、どんな話をしたのですか?

実は、私は夫とお付き合いを始める前に、「次に交際する人とは結婚も視野に入れよう」と考えていました。もともと子どもを産みたいと思っていましたが、夫は既に結婚歴があり、孫もいたくらいですから、本人の選択肢として、結婚しない、子どもを持たないということもあり得ました。なので、交際を始める前に、子どもを持つ気があるのかを確認したら、「昔と違って、勉強をして健康に気を遣っているし、経験も積んできたから、今の遺伝子のほうがきっといいはずだよ」という、ちょっと不思議な答えが返ってきたんです(笑)。

なんというか、石田さんらしい独特な表現ですね(笑)。

これは子どもを持つ気があるのだなと判断して、交際に踏み切りました。その後、「TGP」を経て最初の子どもが生まれました。育ててみると、「子どもって本当にかわいい!」と実感し、もう一人産みたいと思うようになったんです。3人目の娘は2人目の長女の妊活のときにできた受精卵をお腹に迎えようと決断した結果、奇跡的に生まれてきてくれた子どもです。

私は子どもを産みたいという意思を持って、夫の意思を確認して、3人の子どもに恵まれましたが、もし夫との出会いが20歳そこそこだったら、こんな質問はしなかったかもしれません。20代の頃から自分の体をもっと知っていれば、将来を見据えて、その先の選択肢がより広がるのではと思います。例えば、成人式や会社の入社式などで、男女ともに妊孕性(にんようせい、妊娠しやすさを示す言葉) について紹介したり、検査薬のサンプルを提供できたりすれば、もっと多くの人が将来のプランを考えられるのではないでしょうか。

たしかに、日本では現実に即した妊娠の仕組みや避妊について教えてもらえないことがあまりに多いと思います。

そうだと思います。私も、子どもがほしいと希望する場合の妊娠適齢期について若い世代に知ってもらうために、子どもができる仕組みを学べる本をつくれないか、と話しているところです。日本では、性教育は学校教育の中でするけれども、避妊だけでなく生殖の話を含むトータルな性教育はされていないのではないかと思うんです。我が家には女の子も男の子もいるので、それぞれの違いは少しずつわかり始めているようですが、今後、私から子どもたちにどう教えていくかを考えていかなければなりません。

04

周りの評価を気にせず、わがままに生きよう

理子さんは自分の体のために何か習慣にしていることはありますか?

毎晩、入浴後にリセット感覚でストレッチをしています。家事や日常生活での姿勢に気をつけて、常に「ながらエクササイズ」を取り入れていますが、本当はもっとエクササイズをしたいです。健康にはいつも気をつけていて、婦人科検診は毎年受けていますし、先日マラソンイベントに参加したときに、子宮頸がんの検診車が来ていたので、せっかくの機会だと思い、検診を受けました。性や生殖にかかわらず、体の自己管理もしっかりしているつもりです。

普段から、自分で考えて決断するという習慣が身についているんですね。ところで、私たちが女子学生の前で講演するときに、「結婚しても働きたいかですか?」と尋ねると、今はほぼ全員が「働きたい」と答えます。でも、「子どもが生まれてからも働きたいですか?」と尋ね直すと「相手次第」になってしまう人が多いんです。

今はSNSで言ったことに対して、すぐにリアクションが返ってくる時代です。他人の意見にさらされすぎて、自信をなくしている人が多いんじゃないかな。私は小さい頃から、親に「理子は自分が何かを決めたら、人に言われても聞かない性格だから」と言われていました。

でも、振り返ってみると、両親は私に選択肢を与えてくれる一方で、私の意思や決断は尊重してくれて、その決断の責任をきちんと自分でとれるように促していたんだと思います。習いごとでも「ゴルフをしなさい」ではなく、「ピアノとゴルフ、どちらを習いたい?」というように。そうやって普段から一つひとつの決断を積み重ねてきたからこそ、今の自分があります。

これからを生きる10代の女の子たちにアドバイスをお願いします。

周りの評価を気にせずに、わがままに自由に生きてもよいのでは。まず自分を基準にすること。若いうちはたくさん悩むと思いますが、悩むのはいいことです。「悔しい、嫌だな」って悩むのは、今より良くしたいということだから。努力なしに人生は切り開けません。ぜひ自分に合った方法を見つけて、自分らしい道を探してくださいね。

取材・文:I LADY.編集部
編集:加藤将太

*この記事は2019年5月22日に取材したものです

I LADY. な人たち