1991年10月30日生まれ、東京都出身。生まれたのち父親の仕事の関係で7歳までパリで過ごし、帰国後中学・高校時代の5年間は放送部に所属。短大在学中にアルバイトとして始めたアパレル会社に就職したのち、マーケティング会社等に勤務。現在はラジオパーソナリティやDJが所属する事務所「V.A.S.P.」に在籍し、ラジオDJやイベントMC、女性コミュニティ「FITVIBES」の代表を務める。スポーツやカルチャーを通じて、若い世代の女性の活動をサポートしている。
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ラジオDJ、イベントMC、フィットネスコミュニティ「FITVIBES」の代表など、幅広く活動している上野智子さん。さまざまな分野で夢を叶えているように見える彼女も、実は“とにかく自分に自信がなかった”という過去が。いつでも前向きに、アクティブに活動する彼女の原動力とは。
上野さんがラジオDJを志したきっかけは?
昔からとにかくラジオが好きでした。音楽系やトーク系などいろんなジャンルの番組を聞いていましたが、元気をもらえたり、新しいことを知れたり…いつも新しい刺激をくれたのがラジオだったんです。中高時代は放送部に5年間所属して、命を懸けて活動していました(笑)。その頃から脚本を書いたり、しゃべることはずっとやってきて、学生の頃から必然的に「将来はラジオDJになりたい」と思うようになりました。
どのような経緯でラジオDJに?
短大在学中に学生DJをしながら、アパレルブランド「GAP Japan」でアルバイトをしていたのですが、その後短大を中退して、そのままアルバイト先に就職。大好きなファッションの道に進もうと一度は決めたものの、諦めかけていたラジオDJになるという情熱が徐々に再燃してきて…。やっぱりしゃべること、言葉を使うことを仕事にしたいという気持ちをどうしても捨て切れなかったんです。
23歳くらいの頃、今所属しているタレント事務所の社長に会う機会があって、そのとき「ラジオDJになりたいんです!」と懸命に伝えました。その社長は、私が高校生のときから聞いているラジオ番組のナビゲーターで。この機会を逃すまいと必死でした。
上野さんの“ラジオが好き”という気持ちが届いた瞬間だったんですね。
結局、社長に「じゃあうちの事務所においで」と誘ってもらえて。事務所に所属したからといってすぐにラジオのお仕事ができたわけではなく、まずは日本のブランドのSNS配信を手伝ったり、インフルエンサーのキャスティングをしたり、自分ができそうなことにとにかくチャレンジしました。同時にラジオDJのオーディションも受けまくって、24歳の時にようやく名古屋のZIP FMでレギュラーが決まりました。そこから、ラジオDJとしての活動を本格的に始動。やりたいことを声に出して、人に伝えることの大切さを心から実感しました。
上野さんが代表を務めている「FITVIBES」は、どのようなコミュニティですか?
2018年10月に女性向けのフィットネスコミュニティとして立ち上げたのが「FITVIBES」。主にランニングやダンス、トレーニングセッションを開催しています。コロナ禍で実際に対面するのが難しくなってからは、SNSでの配信にも力を入れるように。またSpotifyと連動してフィットネス中にお勧めのプレイリストを定期的に公開配信するなど、ミュージックコンテンツの配信も行っています。
昔からフィットネスになじみがあったんですか?
いえ、全然!そもそも私、フィットネスやスポーツに関わりのない人生だったんです。放送部だったし、どちらかというとインドア派。フィットネスと触れ合ったのは、今の事務所でスポーツブランドのお仕事をいただいたのが始まり。そのとき「スポーツやフィットネスでは、乗り越えられる目標を自分で設定できる」という魅力に気づいた。それを仲間と実行することで習慣化できたり、新しいコミュニティが作れたり…。小さな目標を少しずつ達成することで自己肯定感が高まり、おのずと自信がつくことを実感したので、そんな仲間が集まるコミュニティを作ろうと思ったんです。
上野さん自身、自己肯定感が低いと思う経験があったのですか?
私は、ずっと自信がありませんでした。周囲には学生時代から早々にやりたいことを見つけて活躍している人や、ルックスが可愛い人が多いのに、自分は容姿にも自信がないし“何ができるか”も明確じゃない。漠然とした不安があったんです。
20代になってからもたくさんの壁にぶつかりました。短大を中退したり、仕事がうまくいかなかったり、オーディションに落ちたり…。でも、フィットネスの目標を達成することで“自分の自信を取り戻せる”ベースができたという手応えがあります。だからこれからもずっと、体を動かすことに向き合っていくと思います。
ラジオDJや「FITVIBES」の代表など、さまざまな活動をされていますが、たくさん肩書きをもちたいとずっと考えていたんですか?
はじめからそう考えていたわけではなくて。このような働き方をバカにされることもありましたし、かつて雑誌の企画でさまざまな肩書きをもつ“スラッシャー”として紹介いただいたときには、ある男性スタッフから「お前はひとつひとつのことに集中してないから、全部中途半端なんだよ!」と言われたことすらありました。でも最近では徐々に副業が認知されてきて、動画を配信したり自分の技術をアプリで販売したりするサービスができて、いろいろな仕事をすることがポジティブに考えられるようになってきましたよね。周りの目を気にせず、いろんな働き方や生き方が認められるような世の中になってほしいです。
上野さんが今の若い女性たちに願うことは?
キリスト教系の中学・高校に通っていた当時に教わった「隣人を自分のように愛しなさい」という聖書にある言葉が好きです。これって、自分のことを愛しているから成り立つ言葉で、まさに“Love yourself”。今の若い子たちには、自分のことを愛して、大切にしながら人生の選択をしてほしい。芸能活動を始めたのは、多くの女性に自分の声を届けたいから、という理由もありました。とにかく「自分に正直な選択」ができる環境を作りたくて、私も今模索中です。
そんな言葉を贈ってくれる学校は素敵ですね。
学校には、活躍されている卒業生が講演会で来てくださっていました。そんなかっこいい女性たちを見て育ってきたので、自然と憧れを抱くようになりました。人生の先輩たちの話をたくさん聞いて、自分の人生に活かしたいと。自分もいつかそんな発信ができる女性になりたいです。
「FITVIBES」のコンセプトである“GIRLS BE WILD”も高校の時に贈られた言葉だとか?
卒業式のときに先生に「強く雄々しくあれ!」と言われて送り出されて。その先生はいつも「誰かのために自分がまず始めなさい」と教えてくれて、その言葉をずっと胸に、今のさまざまな活動にもつながっています。女子高の卒業式で、ですよ?かっこよくないですか!?
ではその「FITVIBES」では、今後どのような活動をしていきたいですか?
特に「自分の健康を守ること」と、「広い視野で選択肢をもつこと」を発信していきたいです。心身ともにヘルシーでいるということは、そのときの人生の選択にもすごくつながるので。体を動かすことで得られる“フレッシュな気持ち”はとても大事。前向きなマインドをキープする方法やコミュニティを、今後も築いていきたいと思っています。
健康を守ることの中に、性の選択も意識してもらいたいですね。
先日配信された『ELLE girl UNI』の動画で、性教育YouTuberのシオリーヌさんと、恋愛リアリティ番組『バチェロレッテ』に出演していた画家・杉田陽平さんと「女性の性や体」についての対談をしました。そのとき、男女間の性への意識の違いを改めて感じて。私自身、20代前半だった頃は月経やセックス、妊娠についての話ができる機会がなかったなと思いました。人にはなかなか相談しにくいことでも、私たちがSNSや動画で配信するとより身近なこととしてとらえてもらえるんじゃないかなと思っています。
性の悩み=恥ずかしいという概念がまだまだあるように思います。
実は私、コンドームを作る計画を立てているんです。配信した動画でも「コンドームを買ったことがある女性が圧倒的に少ない」ことや、「女性がコンドームをもっていてもいいよね」っていう話があったように、女性がナプキンをもち歩くのと同じテンションでポーチに入れられるような日が来てほしくて。今は男性目線で作られているものばかりで…女性にも同じくらい接触部分があるのに、なんで男性本位な商品ばかりなんだろうって思ってしまって。
自分の好きなこと、やりたいこと前向きに発言する上野さんに勇気をもらう若い女性たちがたくさんいると思います。
やっぱり好きなことは諦めないことが大事です。私自身「好き」と言い続けてきたことが仕事になってきたので。自分が心から好きなものって相手にもちゃんと伝わります。そこは大事に、素直に楽しんでほしい。
今はまだ好きなことがなかなか見つからないという人も、視野を狭めずいろいろなものを取り入れることを恐れないで。さまざまなことにチャレンジしていくと、年齢を重ねるごとに自分が見えてくるはずです。私もまだまだ迷い、悩み続けていますが、ラジオやフィットネスなど自分ができることを通じて、みんなと自己実現をかなえていきたいと思っています!
取材:I LADY.編集部
文・編集:宍戸沙希(スタッフ・オン)