性と恋愛 意識調査2023

はじめに

国際協力NGOジョイセフは、10月11日の国際ガールズデーに向けて、SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ:性と生殖に関する健康と権利)の意識向上プロジェクト「I LADY.」(http://ilady.world/)の一環として、2年に1度、大規模な「性と恋愛ー日本の若者のSRHR意識調査ー」を実施しています。今年は、より多くの15-29歳の日本の若者(5800人)を対象に、「リアルな恋愛・結婚・家族観」、「性・セックスの意識」、「避妊・性感染症予防の本音」、「セクシュアル・ヘルスについて」、「自分の人生を決められるか」の5つのテーマ別に実施しました。

2019年の調査では、当時の日本の若者の性と恋愛に対する“リアルすぎる”調査結果が大きな反響をよび、2021年は、調査対象を30~64歳の親世代にまで拡大した結果、世代を超えて刷り込まれているステレオタイプと大きな世代間ギャップが可視化されました。そして、第3回目となる2023年は、より多くの若者の本音(5800人)にフォーカス。HPVワクチンや子宮頸がんに関する若者のリアルな現状、セックスや避妊など、性に関する若者の悩みが明らかになりました。

調査目的恋愛、性、セクシュアル・ヘルス/ライツなど、パートナーとの関係性も含めた日本の若者の意識調査
調査対象全国(47都道府県)の15-29歳のこれまでに恋人・パートナーができたことがある5800人 (未既婚不問)(男性2350人/女性3156人/男女どちらでもない294人)
調査手法インターネット調査
調査日程2023/8/9(水)~8/17(木)

5つのテーマ別POINT

リアルな恋愛・結婚・家族観 POINT(1)

  • パートナーには「思いやり・優しさ」「自然体でいられること」を求める。
  • 結婚や子どもについては「結婚はしたいし、子どもを持ちたい」という回答が7割を超えた。一方で、「結婚はしたいが、子どもは持ちたくない」「結婚はしたくないし、子どもも持ちたくない」と5人に1人が回答。
  • 相手に気に入られるために合わせてしまう若者は7割を超える。
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性・セックスの意識 POINT(2)

  • 性的同意について「絶対に大事だと思う」若者は9割を超える。 一方で、「性的同意を得ているつもりだが、本当に得られているか自信がない」と、男性の約2人に1人、女性の約3人に1人が回答。
  • 「具体的に性的同意とはどういうものか、正直わかっていない」の回答も4割を超えており、性的同意の重要性はわかっていながらも具体的には理解していない現状が明らかとなった。
  • セックスに関連した困りごとについては、男性は「特に悩みはない」、女性・男女どちらでもない場合は「容姿や体形に自信がない」、「自分の性器の大きさや形・色・においなどが気になる」が上位にランクインし、性別による差とボディイメージに関する悩みが顕著に見られた。
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避妊・性感染症予防の本音 POINT(3)

  • 性感染症については7割超が、その予防方法については約6割が「知っている」と回答。
  • 避妊をせずに性交渉した経験があるのはおよそ3人に1人。理由として、女性は「相手に言いづらかったから」、「避妊したいと言ったが、相手がしてくれなかったから」、男性は「コンドームをつけると快感が損なわれるから」と回答。
  • ピル服用経験のある女性は、およそ4人に1人。ピルを服用しない理由で、最も多いのは「費用が高額だから」が半数弱と、価格が最大のハードルになっている。
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セクシュアル・ヘルスについて POINT(4)

  • 性に関する情報源は半数以上がネットやSNSと回答。
  • 子宮頸がん検診を定期的(1〜2年毎)に受診しているのは約5人に1人。
  • 受診しない理由としては「受診にお金がかかるから」、「面倒だから」、「どんな検査をするかわからず怖いから」がそれぞれ2割程度と多く、検診の必要性への理解や検診に関する情報の不足が原因となっていた。
  • HPVワクチンの認知度については、女性で約4割、男性では約2割に留まった。
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自分の人生を決められるか POINT(5)

  • 「人生の大きな決断において、自分を頼る傾向があるものの、女性の4割、男性の3割が自分の決断に自信がない。
  • 「自分の性別を理由に進路や職業選択であきらめたことがある」は5人に1人(18.8%)は経験があり、男女どちらでもないと回答した人は4割にも上った。
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性の知識・具体的なノウハウ、実践方法を知らない若者の実態

2019年、2021年と、2年ごとに実施してきたこの「性と恋愛」意識調査は、今回で3回目。調査対象の共通条件は、「これまでに恋人・パートナーとの交際経験がある人」。
若者の恋愛離れが騒がれる中、この調査でも15-19歳男性のモニター数が他の性年代の約半数になっています。

男女ともに、75%がセックスの悩みを抱えている

2023年では、全体の4分の3(75%)の人が悩みがあると回答。自分の「容姿や体形」「性器の大きさや形・色・におい」「経験の少なさ」により自信が持てず、「相手が満足しているかどうか」がわからないことが悩みの上位となっていました。女性は年齢が高くなるにつれて自身の快楽が満たされないことが悩みとなっていました。

15-19歳は経験の少なさゆえに、男女ともに「仕方」、そして男性は「場所」、女性は「避妊や性感染症予防」といった具体的な実践方法がわからないことに困っていて、正しい知識を学ぶ機会が不足していることを調査結果からも読み取れました。

「性的同意」言葉は広まったけれど、同意の取り方を知らない

前述するように「性的同意がどういうものかわかっていない」が4割強に上り、「性的同意」という言葉だけが独り歩きしてしまい、具体的な同意の取り方、確認方法などは曖昧なままとなっている様子が調査結果から読み取れました。

ジョイセフ事務局次長 小野美智代からのコメント

性的同意の基本的な考え方では、「Yes」という言葉での積極的な反応だけが同意とみなされます。沈黙や笑ってはぐらかすといった反応は同意とはいえません。諸外国では、相手との同意がない性交渉はたとえ夫婦間であっても性犯罪にあたります。結婚は、セックスをいつでも自分本位で自由にできるという保証ではありません。日本では、お互いの合意のない性行為は夫婦間であっても性暴力に当たるという認識が薄いように思われます。「夫婦だからセックスをして当然」と考えず、相手に同意を求め、積極的な同意を得ることが、お互いの尊厳と権利を尊重するためにとても大切なプロセスです。そのようなプロセスやノウハウを学ぶ人権教育の機会の不足が日本における大きな課題です。

総じて、今回の調査結果でわかったことは、初回の2019年時と比較してみると、若者の性に関する言葉の認知度は高まっていますが、例えば子宮頸がんという女性の疾患1つをとってみても、予防のための正しい知識がない実態が浮き彫りになりました。基本的人権としてのセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)の情報提供、そのための包括的性教育の機会を、この日本でどうしたら増やせるのか。日本の若者を対象にSRHRの意識向上することを目的としたI LADY.プロジェクトを始動して8年が経過した今、改めてここにいる専門家、アクティビスト、団体、学校、自治体、政府と共に再考し、連帯強化したい気持ちが湧いています。