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ワクチンで予防できる数少ないがん、WHOも9歳からの接種を推奨

子宮頸がんは、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で発生する女性特有のがん。HPV自体は100種類以上の“型”がありますが、このうち子宮頸がんを発生させやすいとされるのが14種類の“高リスク型HPV”です。感染前に高リスク型HPVに対するワクチンを打つことで、子宮頸がんのかなりの割合が予防できると言われています。WHOは各国が、ワクチン定期接種プログラムにHPVワクチンを取り入れ、9歳になったすべての女児にできるだけ早く接種することを推奨しています。(*1)

日本では、2009年に薬事法で最初のHPVワクチンが承認され、2013年には定期接種に取り入れられて接種率は70%に達しましたが、同年のうちに副作用があるとの訴えが数多く上がり、積極的な接種推奨の差し控えが決定されました。その後、2016年に、副作用とされた症状とワクチン接種には因果関係がないとの結論が示されましたが、今も接種の積極的な推奨は行われていません。(*2)

日本は今、HPVワクチンの接種率は1%を下回っています。ワクチン接種が普及しないことが、日本における子宮頸がんのり患と死亡のリスクにどのような影響を与えたかについての論文が、2020年2月に発行された英医学誌ランセットに掲載されました。(*3)

*1 https://www.who.int/immunization/policy/Immunization_routine_table2.pdf
*2 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000103090.pdf http://www.jsog.or.jp/modules/jsogpolicy/index.php?content_id=4
*3 https://www.thelancet.com/journals/lanpub/article/PIIS2468-2667(20)30010-4/fulltext

2008年生まれの700人に1人が子宮頸がんで亡くなる未来…

この論文では、モデル研究に基づき、仮に2013年以降もワクチン接種率が70%の水準で維持されていたとしたら子宮頸がんがどれほど減少していたか、今すぐに接種率が回復した場合はどれだけの子宮頸がんを予防できるか、ワクチン接種率が下がった状態が続くと今後50年間でどれだけの子宮頸がん発症数や死亡数の増加につながるか、などを計算しています。試算によると、このままHPVワクチンの接種率が改善しなければ、今後50年間で、最大で1万800人の女性が、予防できたはずの子宮頸がんで亡くなるというのです。

日本全国で今年12歳になる(2008年生まれの)女の子たち約53万人の例では、子宮頸がんのワクチン接種が行われなくなったことが原因で、このままだと150人に1人の女の子が予防できていたはずの子宮頸がんを発症し、700人に1人が亡くなると予測されています。

HPVは「誰もが一生に一度は感染する」と言われるほどありふれたウイルスです。感染しても90%はそのまま体の免疫機能によって排除され、がんになることはありません。しかし、10%の人では感染が長時間持続し、その一部が長い年月をかけてがんになっていくのです。

すでに感染が持続している人がHPVワクチンを接種しても、感染が治癒したり、始まった病変を正常に戻したりすることはできません。それでも、まだ感染していない人に対して「16型と18型」の2種類を予防するワクチンを打つだけで、7割近くが予防できるようになるのです。日本では現在、この2種類を予防する「2価ワクチン」のほか、この2種類を含む4種類を予防する「4価ワクチン」が承認されており、世界では9種類を予防する「9価ワクチン」も開発されています。これらのワクチンを、感染前の若いうちに接種することで、将来的に子宮頸がんになる可能性を大幅に下げることができるのです。

検診受診率も低い日本、増え続ける子宮頸がんを止めるには

子宮頸がんは、比較的若い世代の女性がかかりやすいがんです。特に最近は発症年齢が下がる傾向にあり、20代から始まって30代後半が発症のピークとなっています。若年化に加えて、発症数、死亡数も共に増加しており、2016年には全国で3万4164人が子宮頸がんを発症し、2710人が亡くなりました。(*4)

自治体の推奨こそ保留されていますが、12歳から16歳までの女性に対する子宮頸がんワクチンの接種費用は、50%が国から、50%が自治体から補助されるため、現在も自己負担なく無料で受けられます。

また、子宮頸がんは早期に発見できれば、治癒する可能性の高いがんでもあります。ごく初期のステージIであれば5年生存率は95%以上(*5) で、検診のメリットがとても大きいのです。日本は、ワクチン接種だけでなく子宮頸がんの受診率も先進国の中では低く、予防と治療の両面で「救えるはずの女性たちの命」が危険にさらされている状態です。

I LADY.は、あなたとあなたの大切な家族やお友達の命を落とさないよう、そのためにできることは何か、いま一度考え直してみることを提唱します。

*4 https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/index.html
*5 https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/0808_1/index.html