ILADY

2019年8月28~30日の3日間、横浜市のパシフィコ横浜で、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催され、日本とアフリカ各国から多くの関係者が集まって、アフリカの発展に向けた議論を行いました。

ジョイセフは8月30日、TICAD7のために来日した若者を招き、セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)について日本の若者と意見を交わすイベント「TICAD x I LADY. ジェンダー平等と人間の権利のために」 ~レソト・トーゴ・日本の若者の報告~」を開催しました。
パネリストはレソトの助産師で、同国のモバイルアプリサービス「MobiHope」創設者でもあり、SheDecides 25x25*メンバーとしても活躍するマメロ・マヘレさん、トーゴで若者向けのピア・エデュケーターとして活動するエメファ・シェリタ・アンコウさんのお二人。日本からは、I LADY.ピア・アクティビストの二人が会場で、海外から二人がネット中継で参加しました。

*SheDecides(https://www.shedecides.com/)は2017年1月、トランプ大統領が再導入したグローバル・ギャグ・ルール(メキシコシティ政策)を機に始まった世界的なムーブメント。すべての少女と女性たちが自分のセクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(SRHR)について自由に選択し決断できる世界を作るために発言し、行動します。各国政府、国連機関、国際家族計画連盟(IPPF)などが賛同し、支援しています。国際人口開発会議(ICPD)25周年を記念して選ばれた25名の25歳の若者が、 25×25と呼ばれるアクティビストとして国際的に活動しています。

開会挨拶をした国際家族計画連盟(IPPF)アフリカ連合連絡事務局長のサム・ヌテラモさんは、「アフリカでは女性にいつ、何人子どもを持つかという決定権がなく、家庭を持つ男性が若い女性と性交渉を持つこともしばしばあります。多くの場合は男性が国の指導者であり、中絶などについても男性だけで法律を作っています。年配の男性指導者たちは、若者に利益のある政策を実施するメリットを実感できていません。若い女性が声を上げることが大切です。また、妊娠や出産だけでなく人間関係や感情、コミュニケーション、性的役割とジェンダーの多様性などを幅広く学ぶ“包括的性教育”を通して、女性が自分の体について知らなければなりません」と、この日集まったユース世代に励ましの言葉を掛けました。

エメファさんは、全国人口780万人のうち15歳未満が40%、25歳未満が60%を占めるトーゴでは、若者の性交渉はもとより、性についての情報を学んだり、話し合ったりすることもタブーとされていると話しました。性に関する情報不足に加えてSRHRサービスも普及していないことが、望まない妊娠や高い妊産婦死亡率、性感染症の蔓延などにつながり、妊娠が原因で学校を退学せざるを得ない女性がいることも問題です。そこで、IPPFトーゴ(ATBEF)で活動するエメファさんら若者ピア・エデュケーターは、啓発のための漫画本の作成や、ラジオ・テレビの番組を使った情報発信、携帯アプリの「info ado jeunes(思春期の若者ニュース)」などを通して若者に幅広く情報を届ける活動を展開しています。今後は、学校での包括的性教育の導入や、農村におけるSRHRニーズの汲み取りと若者に情報を提供するユースセンターの開設への取り組みを計画しており、特に学校に通っていない若者へのSRHRサービス提供を目指していきたいと目標を語りました。

マメロさんの出身国、南アフリカ共和国に周囲を囲まれた人口220万人のレソトでは、女性のHIV感染率が特に高い一方で、近年は家族計画の普及・高校での包括的性教育の導入やそれに伴う妊産婦死亡率の改善、分娩介助者の増加など、SRHR分野で前進が見られます。しかし、妊産婦死亡率は今なお国際的に高い水準(2017年は544、日本は5)にあることや、若者が性に関する情報にアクセスすることをタブー視する文化、農村部での物資不足、中絶法の不備とそれに伴う危険な非合法中絶などの問題を抱えています。マメロさんは女性の健康を推進する「She Decides」の活動を通じて政策や若者の意識を目指すことに加え、HIV感染患者向けの携帯アプリ「MobiHope」を活用して近くに通えるクリニックがなかったり、通院が途絶えがちになってしまう患者のフォローアップや患者のデータベース作成などに活かしていきたいと語りました。

上智大学在学中のI LADY.ピア・アクティビスト、水口瞳さんは、ミッション系の中高一貫校に通っていたころは性教育を受ける機会がなく、ジョイセフのイベントに参加して「自分は性について何も知らない、これは後輩にも伝えていかなければならない」と、啓発活動に取り組むようになった経緯を語りました。桜美林大学大学院で国際協力について学ぶ横溝南都海さんは、ピア・エデュケーターだった男性の友人が開催したワークショップでSRHRについて知ったことがきっかけで啓発活動を始め、LGBTQの支援団体を立ち上げたと話しました。
二人が紹介した日本のSRHRの課題としては、レイプの被害や望まない妊娠を女性にも非があり自業自得だと責める文化や、出産・中絶を選択する権利について女性自身が認識していないこと、女性が主体的に避妊する手段の少なさや入手先の制限・値段の高さなどがあります。日本でSRHRを推進するにあたっては、性教育や女性主体の避妊手段へのアクセスの向上といった課題の克服に加え、ジェンダーバイアスや性的役割分担を解消し、女性が自分の体について決定権をもっていることを広く発信することが必要と語りました。

「若い人が性について話せない、情報がない」は共通の課題

3カ国の現状と課題を共有した後は、ペルーやチリで活動中の山本和奈さん、留学先のスウェーデンから福田和子さんの二人のI LADY.アクティビストがネット中継で加わり、ジャーナリストでジョイセフ理事の治部れんげさんの司会でパネルディスカッションを行いました。治部さんは最初に、パネリストに「互いに似ているところ、違っているところはどこだと思いましたか」と質問。山本さんは、「国や大陸ごとに、ジェンダー問題の課題は変化する。たとえば、南米では保守的なカトリック教会の影響で、性教育を学校教育に組み込むことに市民の6割が反対している」と指摘しました。一方、マメロさんは「ジェンダーに基づく暴力は、日本とアフリカはもちろん、世界あらゆる地域で共通する問題なのでは」との考えを示しました。
エメファさんが「特に農村地域では、若い人が性について話すことがタブーとされていて、情報がないために妊娠して学校を辞めざるを得なくなる女の子がいます」と語ると、水口さんも「学校では、性行為がいやだったら拒否していいということは教わらなかった。交際相手からコンドームなしでセックスしたいと言われた時に、“No”を言っていいと知らずに受け入れれば、誰でも妊娠する可能性がある」と振り返りました。
一方、横溝さんは「身近な友人ともSRHRの啓発活動をしていることは話しているし、自分から他の人のところに足を延ばして情報を届けるようにしている」、福田さんは「スウェーデンでは大学に男性用・女性用のコンドームが置いてあることが普通で、性的自己決定権が社会全体のコンセンサスになっている」と話しました。
助産師でもあるマメロさんは、「職場で同僚に情報を提供するほか、SNSやテレビ・ラジオ、新聞などで積極的に発信し、他のNGOとも協力している」と、情報を少しでも多くの人に拡散する工夫を説明しました。エメファさんは、「SRHRに関する課題のことを知らない親やコミュニティ全体に伝え、認知を高めるように心がけている」と述べました。
山本さん、福田さんは、どちらも当事者意識のない人が多く、それが壁となっているという認識を示しました。山本さんは「ジェンダーの問題は、あらゆる社会的課題につながっていると思う。どのように話すきっかけを作り、伝えられるかが課題」、福田さんは「自分にも関係があることだと思うきっかけを作る必要がある」と話しました。
治部さんは、挨拶でサム・ヌテラモさんが語った「立法に携わるのは高齢の男性が多く、自分たちが若かった時の問題を忘れている」という言葉を引き合いに、SRHRの問題を身近に感じていない人たちの理解をどうやって深めていけば良いかと問いかけました。マメロさんは「中絶合法化が必要だが、レソトではそれが話題に上らない。みんなで話す必要がある」、エメファさんは「若い世代に対して、あなたたちが国の未来なのだと伝え、教育を通してエンパワーしていくことが重要」と答えました。横溝さんは、「私が生まれ育った地域は農村地帯で、性の話はタブー。ピア・アクティビストになった今でも、地元でSRHRの話をするのは怖い。もっと地域の事情を反映した政策が必要だと思う」、水口さんは、「性教育が充実していない学校では、先生たちも性教育をどのように行えばいいかを知らない。私たちピア・アクティビストも積極的に後輩たちに発信していくが、同時に先生たちにも性教育について学んでほしい」と訴えました。
こうした考えを政策に反映するために、福田さんは、「なるべく自分の話をしないで、プロジェクトに寄せられる多くの人のメッセージを伝えるようにしている。同時に、政治の中で、もっと若い世代や女性たちがプレゼンスを発揮する必要がある」と強調。山本さんも「今の日本の政治には多様性が足りないため、結果的に政策も偏ってしまっている。知識が偏っている人たちにもビジネスライクに、メリットが伝わるようなアプローチをしていくことが重要」と語りました。

その後、会場の参加者との意見交換では、「日本でも妊娠・出産で死ぬことがあるのを知らない人が多い。どうすれば男性もSRHRへの取り組みに取り込んでいけるか」という男性看護師の意見に対して、マメロさんが「女性が性の情報にアクセスすることに、ネガティブなイメージを持つ人も多い。私たちは男女両方に情報を提供するとともに、男性とオープンディスカッションをして、男性パートナーの参加、支援の重要性を伝えている」、山本さんは「SRHRは男女の争いではないし、フェミニズムも女性のためだけの活動ではない。男性にも影響する問題だという当事者意識をもってもらうとともに、男性と対立せず、多様性や自分らしさがかっこいいというメッセージを伝えていくことが大切」と回答しました。

最後に挨拶したジョイセフ事務局長の勝部まゆみは、「女性を取り巻くSRHRやジェンダーの課題に対して、世界各地の若い人たちがどんな立場に置かれ、どうやって未来を切り開こうとしているかを直接聞くことができたのは貴重な機会。若い人の課題は、実際には年齢やジェンダーを越えてすべての人が当事者になりうる課題だ」と、パネリストたちに感謝の意を示しました。その上で、「SDGsはジェンダーの平等や女性と少女のエンパワーメントについて、さまざまな角度から言及している。SDGsは途上国と先進国が同時に取り組むべき課題であり、ジョイセフは今後も国や地域を超えて、さまざまなパートナーと共に活動を進めていきたい」と述べました。

今回参加したユース世代の皆さんは、SRHRの社会全体での認知度向上と同時に、より若い十代の女性たちに情報を伝えていくことの大切さを強調していたのが印象的です。
IPPFは現在、若い世代の意見を反映した「ユースマニフェスト」を作成しています。ジョイセフも若い世代と手を携え、SRHR推進活動を展開していきます。