ILADY

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性教育と聞いて何をイメージしますか?性というタブーな話題をみんなで聞くという、少し照れくさい時間。2003年には教員処分にまで発展する性教育バッシングが起き、2013年には日本テレビで放映された「ニッポンの性教育 セックスをどこまで教えるか」が数々の波紋を呼ぶなど、今もなお、その方向性を模索している日本の性教育。果たして正解はどこにあるのか?今の日本の課題とともに、性教育の現状を振り返ります。

日本人は避妊が苦手?日本より性にオープンな国の方が、避妊実行率が高い理由

挿絵2日本では、性に関する話題が公の場で語られることは少ないと思います。では実際のところ、日本の性事情はどのような状況なのでしょうか。国ごとの避妊実行率を見てみましょう。世界人口白書2016によって、世界の避妊実行率をみると、日本は51%と半数。それに比べ、イギリスが80%、フランス、フィンランドが72%、アメリカ69%、オランダ65%など、ほとんどの先進国が日本よりスコアが高いことがわかります。


15-49 歳女性の避妊実行率

(コンドームやピルなどの近代的避妊法、%、2016年)

日本 51
アメリカ 69
オランダ 65
フランス 72
フィンランド 72
イギリス 80
ドイツ 62
オーストラリア 65
カナダ 71
タイ 76
中国 82
韓国 69

※世界人口白書2016 / UNFPA


 

セックスを行う前から正しい避妊方法を知っていなければ、避妊は実行できません。今の日本では女子高校生の5人に1人、男子高校生の7人に1人がセックスの経験があるといわれています(*1)。そして驚くべきことに、日本では1週間に約310件もの人工妊娠中絶が10代の女の子に行われており(*2)、1週間で約229人の10代の女の子が出産しています(*3)。

(*1)「若者の性」白書-第7回 青少年の性行動全国調査報告 / 日本性教育協会編 / 2013年 / 小学館
(*2)平成27年度衛生行政報告例の概況 / 厚生労働省
(*3)平成27年人口動態統計月報年計(概数)の概況 / 厚生労働省

このような状況がある中で、今の日本の性教育は十分と言えるのでしょうか?日本でどのような性教育が行われているのか、改めて振り返ってみましょう。

子どもたちのセックスを認める?認めない?親たちの抱える悩みとは

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日本の文部科学省では、18歳未満の子どもたちは社会的責任を十分にはとれない存在であり、「子どもたちの性行為を認めない」というスタンスに立って指導内容が組まれています。一方で日本は、女性が16歳で結婚できる国(男性は18歳)。
児童婚を認めている先進国ということで男女格差指数(ジェンダー・ギャップ・インデックス)のランキングを下げる要因にもなっており、「結婚はできるのに性行為は認めない」という大きな矛盾を抱えています。

また、文部科学省は性教育について、「避妊方法を具体的に教えることに走らず、科学的な理解を促す」としています。理科の授業で、動物の誕生のひとつとして「ヒトの誕生」を学びますが、「受精に至る過程は取り扱わないものとする」とされているのです。また、2003年に起きた性教育バッシングで教員処分が起きたことや、指導要領で「性教育は保護者、地域の理解を得て進めること」と定められていることから、保健の授業を担う教員にとっては厄介な科目でもあります。このような理由から、現在の小中学校では、セックスや避妊について具体的に教えられることがないのが通常です。

日本の教材挿絵イメージ
日本性教育挿絵イメージ

アメリカの教材挿絵イメージ
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※1992年発行「新しい保健」/「It’s Perfectly Normal」を参考に描き起こしたものです。

 

日本のカリキュラム 概要
時期 具体的内容
小学3・4年 img002 思春期の初経,精通。異性への関心の芽生え。
小学4・5年 年齢とともに発達する心。
不安や悩みへの対処には,大人や友達に相談する,仲間と遊ぶなどいろいろな方法があること。
小学5・6生 互いに信頼し,男女仲よく協力し助け合うこと。
中学 syougakusei 思春期には,内分泌の働きによって生殖にかかわる機能が成熟すること。
また,こうした変化に対応した適切な行動が必要となること。
男女は,互いに異性についての正しい理解を深め,相手の人格を尊重する。
高校 uirusu++ エイズ・結核などの感染症予防のための、
社会的な対策と個人の適切な行動。
chi 異性を尊重する態度。男女平等。
性に関する適切な意志決定や行動選択。
tyuzetu 健康な結婚生活。受精,妊娠,出産とそれに伴う健康問題。
家族計画の意義や人工妊娠中絶の心身への影響。
適切な意志決定や良好な人間関係を築くこと。健康な結婚生活の基盤。

参考 文部科学省 ホームページ


 

単純に性教育の開始時期を早めればいい、というわけではありません。しかし、日本の女子高校生の5人に1人、男子高校生の7人に1人はセックスの経験があるという現状を考えると、現在のカリキュラムのままで本当に望まない妊娠や中絶を防げるのでしょうか。

恋愛って?セックスって?日本に幸せなパートナーシップを増やすための性教育

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子どもたちは恋愛におけるセックスの存在や、理想的な恋愛関係について、いつどのように知るのでしょう。科学的で抽象的な現在の性教育の代わりに、子どもたちは「漫画やドラマ」「インターネット上のコンテンツ」「アダルトビデオ」「経験済みの友人や先輩」などから恋愛やセックスについて見聞きしています。親や学校が教えない限り、実践的な教えは「物語の中の性表現」や「同年代の友人や先輩の知識」に委ねられているのです。

性感染症や中絶など、セックスにまつわるリスクを知る機会はありますが、恋愛の上でのセックスや実践的な危険回避の方法について、公の場では誰も教えてくれません。しかし、「恋に落ちるということ」「幸せなパートナーとの関係」「セックスの真の意味やそれがもたらすもの」「セックスで起こりうる危険」などについて、フィクションや噂話ではない現実を知る機会が必要です。

子どもたちの望まない妊娠・中絶や、性に関して起こりうる危険を防ぐために、世界ではどのような性教育が行われているのでしょうか?<後編>では、他国の事例をのぞいてみましょう。

参考:「こんなに違う!世界の性教育」 橋本紀子 監修