ILADY

1世界保健機関(WHO)によると、不妊に悩むカップルの約2組に1組は男性不妊。(※1)男性に起因する不妊には、大きく分けると以下のようなものがあります。

  1. 勃起や射精に障害がある場合→前編
  2. 精子に異常がある場合(数、動き、形)→後編

前編「イケないのは愛のせいじゃない!?」では勃起障害や射精障害について取り上げ、その原因は「愛がないから」ではないとお伝えしました。コラムの後編では、勃起や射精には異常がないにもかかわらず妊娠できない男性不妊、つまり精子に異常があるケースについてお伝えします。

【症状】精液は出るのに、妊娠しない!?

男性不妊の原因で多いのが「乏精子症」(ぼうせいししょう)です。精子の個数が少ない、精子が卵子まで泳いで行かない、奇形な精子が多いなどの症状のことです。他にも、精子の動きが鈍い「精子無力症」などの症例があります。

これらの精子異常の原因は何でしょうか? その一つに、精巣に血がたまって瘤(こぶ)ができてしまう症状があります。精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)と呼ばれ、男性不妊患者の約40%の人がかかっているというデータもあります。(※3)これは精巣から心臓へと上るはずの血が逆流し、精巣の周りにたまってしまう症状です。この精索静脈瘤があると精巣の温度が上がります。精子づくりには体温より低めの温度が適しているので、温度の上昇は精子に悪影響を及ぼしてしまうのです。また逆流血によって起こる酸化ストレスも、精子づくりに悪影響を与えると考えられています。

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インタビューにお答えいただいた、獨協医科大学越谷(こしがや)病院泌尿器科医の小堀善友先生。I LADY.キャンペーンのアクティビストとして、男性にもできる妊活を応援している。

【対処法】まずは睡眠や運動の改善から

泌尿器科医の小堀善友先生によると、症状が軽い場合には生活習慣を見直してもらうそうです。例えば飲み過ぎ、運動不足、寝不足などの改善を促します。生活習慣が乱れて肥満や高血圧になると、男性不妊のリスクも高まるためです。その次に、抗酸化剤などのサプリメントを飲むそうです。

一方、重度の乏精子症の方には精索静脈瘤の手術が有効だそうです。手術後の精液検査の改善率は57%、妊娠率は36%になるとのデータもあります。(※4)ただし改善するまでには約半年かかるため、後で述べる人工授精などと並行することがあります。ここまでは男性ができる対処法ですが、男性不妊のケースでも女性ができる対処法があります。

男性に治療を受けてもらうのと並行して、女性側では人工授精、体外受精、顕微授精と徐々に高度の生殖補助医療を用いていきます。これをステップアップと呼びます。初めに試すのは人工授精です。採取した精液を、専用の管を用いて子宮に注入する方法のことです。この治療を複数回くり返すと、妊娠率は10~20%といわれています。(※5)くり返してもうまくいかない場合、次に体外受精を試します。子宮から卵子を取り出し、精子と一緒にシャーレに入れて受精を待ちます。受精卵になったら管を用いて子宮に戻します。

もしも上記でうまくいかない場合や、精子がほとんど確認できない場合は手術を行います。TESE(精巣内精子採取術)といって、精巣を切って直接精子を採取する方法です。いくつかでも採取できれば、顕微授精を用いて受精が可能です。「顕微授精」とは、顕微鏡で観察しながら一つだけ精子をつかまえ、ガラス管を用いて卵子に注入する方法です。卵子に精子をふりかける体外受精と違って卵子内に直接注入するため、卵子に向かって泳がない精子も受精させることができます。なお精液中に精子がまったくない「無精子症」の場合も、精巣内なら精子があるかもしれないのでこの方法を用います。

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「いきなり病院はちょっと…」という方にオススメ。
スマホで精子をセルフチェック!

では、精子が正常かどうか知るにはどうすればよいでしょうか? 泌尿器科に行き「精液検査」をすれば、精液中の精子数や運動率などを調べることができます。一見、大事(おおごと)のように感じられる人もいるかもしれませんが、数や運動率などの基礎的な検査項目であれば健康保険も適用されるそうです。(検査内容は病院によってさまざまなので事前に調べてみましょう)しかし病院へ行くとなると、診察時の精子採取が恥ずかしいなど心理的に抵抗がある人も多いかもしれません。

そこで最近では、自宅で手軽に精子の状態を観察できるキットが開発され、話題になっています。泌尿器科医の小堀善友先生がテンガと開発したTENGA メンズルーペです。方法は簡単。スマホに専用ルーペをつけ、採取した精子をのぞくだけ。キットの代金は1500円程度で、病院に行かなくても手軽に精子の状態を確認できます。

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このTENGAメンズルーペでもしも精子が見当たらなかったり、動かなかったりするようであれば、泌尿器科医で診察を受けることをおすすめします。精子の観察のコツはこちら(※この商品はあくまでも観察キットで、医学的判断をするものではありません。)

精子を知ることは、男性自身の体を知ること

TENGAメンズルーペを開発した小堀善友先生は、男性不妊の治療を専門とします。しかしこの分野の専門医はまだ少ないそうで、先生の勤める埼玉県の獨協医科大学越谷病院には遠方の他県から来る患者さんもいらっしゃるそうです。また、四国・沖縄には男性不妊の専門医はほとんどいないのが現状。だから小堀先生はまずは自宅でも手軽にチェックできるようにと、TENGAメンズルーペの開発に取り組まれたそうです。

「不妊治療」というと女性の問題だととらえられがちな背景には、男性の生殖に関する知識が広く普及していないことが挙げられます。セックスをする人ならすべて、「避妊」や「妊娠」は人ごとではありません。そしてこれは男女ともに考えていくべき大事な話です。この記事が多くの男性にとって、「妊娠」を身近にするためのきっかけになったらと思います。



本記事は、泌尿器科医 小堀善友先生へのインタビューを参考にしています。 学術的な指摘や実際の診断に基づいた対処法についてご指導いただき、ありがとうございました。