ILADY

I LADY. INTERVIEW


「I LADY.」とは?
自分のこと、そして誰かのことを考えるヒントになる、
アクティビストへのインタビューコラム集。

INTERVIEW#10 読んですぐに女子力アップする今すぐ役立つ、コラム集。 鎌田 華乃子 × 中野 宏美さん

(左)NPO法人しあわせなみだ 理事長・中野宏美さん、(右)コミュニティ・オーガナイジング・ジャパン 代表理事・鎌田華乃子さん。今回は、日本の“性暴力被害”をなくそうと立ち上がったお二人に国際協力NGOジョイセフ・小野美智代がお話をうかがいます。

明治時代につくられた、もはや時代錯誤の性犯罪刑法

小野美智代(以下小野):まず最初に、なぜお二人は性暴力をなくすためのアクションをはじめたのでしょうか?


中野宏美さん(以下中野):元々、学生時代に福祉を専攻していて、その時の実習で施設に行った際に家族から性暴力にあっている方々と接して、大変なショックを受けたんですね。本来であれば加害者が罰せられるべきなのに、被害を受けたほうが身を隠していなければならず、それからの人生がすごく困難になってしまうのはおかしいんじゃないかって。その後、友人がDV被害にあっていたことを知り、それに対して気づいてあげられなかったんです。自分が福祉を学んでいるのに、何もできないことにすごく無力感を感じてしまいました。

そんな時に小林美佳さんという方が書かれた『性暴力被害にあうということ』(朝日新聞出版)という書籍に出会い、今まで自分が学んできた福祉ともリンクすることに共感を得て、現在の活動に繋がる団体を立ち上げました。

鎌田華乃子さん(以下鎌田):私は自身が社会的弱者が声をあげやすい世の中をつくるというNPOをやっているなかで、中野さんが主催されていた『性暴力・本当は何が起きているのかプロジェクト』の講義に講師として参加したことがきっかけです。実はそれまでは性暴力というものをそんなに意識していなかったのですが、講義のなかで、日本は110年刑法が変わっていないということや、今まで性暴力被害として認識していなかったようなことも「ああ、そういえば、あれは性暴力だったのかもしれないな」と思うようなこともいくつか出てきて。

小野:刑法が110年間変わってないことは意外と知られていませんよね。


鎌田:私も初めて知った時は本当に驚きました。私自身が性暴力と認識していなかったことも、そもそも刑法自体が変わってないことに起因しているんじゃないかと思ったんです。ちょうど、並行して『ちゃぶ台返し女子アクション』というプロジェクトで65人の女性にインタビューをする企画があり、そこで生きづらさを感じることのひとつとして“セクハラ”を挙げる人が多かったんですね。例えば、信頼していた上司から性的関係を迫られたり、急にタクシーで抱きつかれたり。一生懸命仕事をしているのに、結局は性の対象として見られてしまっているという悩みを話す方が多いなかで、私自身が個人として感じてきたことと付合する部分がすごくたくさんあって……。 これって社会構造的な問題があるんじゃないかと、そして、ちょうど、『ちゃぶ台返し女子アクション』でも具体的に変化を起こすキャンペーンをしていきたいと考えたときに、ちょうど刑法が110年ぶりに改正されるということで注目されるので、本気で性暴力被害をなくすきっかけになるんじゃないかということで、中野さんたちと一緒に活動をすることになりました。

中野:改正は昨年(2016年)の予定だったんですけど、実は延びてしまっているんですね。そこで、実際に改正にあたり、現在の法律のどこが問題かというブックレットを共同で制作しました。

検察が人を刺しているのを発見したら傷害罪に問えるのに、性暴力は本人の告訴が必要

小野:実際にほとんどの女性たちが現行の刑法について知らないと思います。どのような内容が問題なのか教えてください。


中野:2014年から刑法改正について議論が開始されるのですが、きっかけは、当時、法務大臣だった松島みどりさんが「現行の刑法は現代にそぐわない」と問題提起をしたんですね。現在の刑法では、強盗罪よりも強姦罪のほうが刑が軽いのです。そして、親告罪といって、被害者からの告訴がなければ検察が起訴をすることができないという法律になっていて。それはおかしいんじゃないかと。例えば、殺人は本人が亡くなっているので、本人が告訴することができません。検察が殺人事件を発見したら、捜査が開始されますよね。でも、性犯罪だと本人が事件化して欲しいと告訴しない限り事件として取り扱ってもらえないんです。

鎌田:普通、警察に相談しにいった時点で捜査してくれると思いますよね? でも、本人が「告訴します」といわなければ被害届レベルになってしまう。例えばこんな例があります。暴行の様子をビデオで撮影していて、それを処分するから告訴を取り下げろと強要されたという事例があって、これは親告罪だからこのようなことになってしまったんですね。今回の改正で親告罪は非親告罪に変わることになり、今後は事件性があると検察で判断されれば、起訴できるようになります。

小野:警察にいっても告訴をしなかった方も多くいたということですよね。実際にどれくらいの数が告訴に至ってないのでしょうか?


中野:実はその数字が明らかにされていないのです。その数字をきちんと出して欲しいということも我々の団体では訴えています。 そして、今回、改正されずに問題となっているのは“暴行脅迫”です。これは、私たちがいまメインで伝えていることなのですが、暴行脅迫を受けたと立証できなければ罪として問えないということなのです。たとえば、体に誰が見てもわかるような傷がついているとか、具体的な証拠がないと有罪になりにくいという問題があるんです。

小野:暴行をされそうになっている状況で必ずしも抵抗ができるわけではないですよね。


鎌田:例えば、ある14歳の女性が24歳の男性と付き合いはじめて、女性側はまだ待って欲しいと言っていたにも関わらず、付き合ったその日に車の中でレイプをされたということがあったんですが、裁判官が「性行為には多少の力は必要だ」と判断して無罪になってしまったという判例があります。 加害者側が抵抗されたと思ってない、同意があったと思っていた場合、暴行として認められないことがあります。

自分よりも力がある人に抵抗するってものすごく怖いこと。殺されてしまうかもしれないし、命を守るために抵抗をしないということもありますよね。性被害にあった方に話をうかがうと、怖くてされるがままになっていたというケースがとても多いんです。

中野:そして、性暴力の加害者の75%が顔見知りや知人なんです。親兄弟や上司や部下の地位関係性がある場合、怪我などの危害を加えなくても性暴力がなしえてしまうんですね。

鎌田:プロゴルファーを目指していた18歳の女の子が50代の講師に「メンタルが弱いから鍛えてやる」という理由で体の関係を強要されたが、抵抗をしていないからと無罪になったという判例があります。自分の将来を握っているような相手に強要された場合、抵抗できないことがありますよね。

そして、性暴力被害者を支援している団体の方にお話をうかがったのですが、先ほどのゴルフ講師のようなケースで無罪になってしまうとメディアに被害が出てこないので、被害を受けている本人が性暴力であること自体を認識しにくい場合も多く出てきてしまっているということでした。

性暴力がきちんと罰せられる刑法で、世の中に事件として明るみになっていれば声をあげることができますよね。メディアで取り上げられるのが、“見知らぬ人に夜道で必死に抵抗したにも関わらず襲われた”というようなケースばかりだと、知り合いにレイプされたけど怖くて抵抗できなかった、という人は「自分の経験はレイプ」だと認識できなくて、被害を訴えるということすらできません。

小野:メディアに出ることで、加害者側を抑制することもできますよね。地位関係性があるような場合、自分のしている行動を犯罪と思ってない男性もいるはず。特に日本人の性暴力の認識について、6コマのイラストがとてもわかりやすいですよね。これを読んでいる皆さんにもどれが性暴力なのかをぜひチェックしていただければと思います。


鎌田:海外の方にどれが性暴力だと思いますか?と聞いたら、「全部」と答えます。日本人の方に聞いても99%性暴力と答えるので、現状の日本の刑法と市民の認識にズレがあると思います。私たちはこれらすべて性暴力にあたると考えていますが、現行の刑法だと有罪になりにくい場合もあります。今回の改正で「4 親子のあいだ」は、『監護者による強制性交』として新設され、暴行や脅迫がなくても罰せられることになりますが、それも親や施設の職員であるような、一緒に暮らし、養育に責任を持つ者によるケースのみ。兄弟や親戚はあてはまらないという不備のある改正案なんです。



(後編に続く)

撮影場所協力:株式会社enish

執筆担当:I LADY.編集部 長谷川直子/エディター・ディレクター

1979年生まれ。2000 年より雑誌編集者としてキャリアをスタート。2007年コンデナスト・ジャパン入社。インターナショナルマガジンの編集部に在籍。独立後は女性誌を中心にエディター・ライターとして活動し、現在は、女性向けwebサービスやアパレルのクリエイティブ製作や企画のディレクションに携わる。I LADY.キャンペーンではアクティビストとしても参加している。


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